博多織ができるまで
一つの博多織製品ができるまでには、
多くの工程があります。
ここでは主な作業を
抜粋してお伝えします。
図案
織物のデザインを決める作業。日本の四季や風習を表現し長く継承されてきた定番の文様や、新たに描き起こされた図案などを組合わせて、イメージを固めていく。
意匠/デザイン
1の図案をもとに、方眼紙にたて糸とよこ糸の交差具合(幅、糸数など)を示す織組織を描き起こす作業。幅1mmにも満たない糸一本さえも調整する、きわめて緻密な設計作業。
精練
蚕(糸を吐く虫)の繭から紡いだ生糸の油分や汚れを取り除き、柔かな絹糸に仕立てる作業。石けんや炭酸ソーダを使って数時間丁寧に洗うと、糸にふっくらと光沢が出る。
染色
3で精練した糸を染め上げる作業。一定量の糸を輪のように束ねた「綛(かせ)」という状態で作業を進める。色見本どおりの色を出すには熟練の経験が必要。
糸繰り
染め上がった糸を作業しやすいように再度、枠木に巻きなおす作業。糸の張力を一定に保って巻きなおすことがきれいな織物をつくる大切なコツ。
整経
2の意匠作業で決めた織組織の設計図どおりにたて糸を並べ、ロール状に巻きつけていく作業。特に博多織ではたて糸で色と柄を出すため1本単位で計算を重ねながら巻きあげる、間違いの許されない工程。
経継ぎ
6で大きなロール状に巻き上げたたて糸を手織機のたて糸に一本一本結びつけていく作業。実に数千本もの糸を手作業で結びきってようやくたて糸の準備が完了する。
緯合わせ
細いよこ糸を数本の束状にまとめ合わせて、太い糸に仕立てる作業。この太い束のよこ糸こそが、「しなやかで丈夫」な博多織独特の着心地を生み出す。
管巻き
8でまとめ合わせたよこ糸を、杼(シャトル)にセットするための管に巻いていく作業。製織時のほどけやすさを意識しながらもしっかりと巻く微妙な力加減で、よこ糸の準備もいよいよ完了。
製織
手織機にセットされたたて糸に、シャトルのよこ糸をくぐらせ打ち込んでいく、織作業のハイライト。「トーン、トントントン」のリズムで打ち込み数を確認しながら、糸が切れていないか、柄がきちんと出ているかなど、全集中力を注ぎ込んで仕上げていく。
完成
完成した織物は厳密な検品作業をへて、ようやく商品として出荷される。こうした途方もない工程を経てひとつの織物が完成するまで、通常でも数か月から半年程度が要される。